インドから帰国して、早くも1ヶ月以上経ちました。藍で真っ青に染まっていた爪も、段々薄くなっていて、時が流れたのを感じます。カッチからデリーへ向かう列車で、ブログ用に滞在中の振り返りのメモを取っていましたが、個展とWSの準備で、あっという間に月日が経ち、今更ながら更新する次第です。

まず、アジュラクプールのブロックプリント工房。頭も体も目一杯動かして、多くの作品を作りました。思い出も沢山あります。
基本は今までと変わらず、1人で淡々と制作して、お昼とチャイは職人さんとご一緒する、のルーティンですが、合間のちょっとしたコミュニケーションや、見ていた景色が恋しい。
新しく取り組んだこととして、アジュラックを繋ぐ11代目フェイザンとのコラボが実現。実際に一緒に制作すると、ああ、そこに拘りがあるのか、とか、意外な発見も多くて。提案したデザインは何だかんだ却下されることも多々でしたが(笑)、普段と違う様子が知れて楽しかった。是非またコラボしたいです。

そして、例年より多くの日本人が工房に訪れました。カンカン照りの下、ダイナミックに拡張する工房敷地内をご案内。三者三様に楽しんでもらえてたら嬉しいです。

アジュラクプールの小学校には2度訪問しました。1度目は、毎回恒例のナチュラルブロックプリントキットの売上の一部の還元しに。当日、なんと学生さんたちが待ち構えてくれていて、歌を歌ってくれました。ずっと覚えていたい一場面。

2度目の訪問は、共和国記念日セレモニーへの参加。村中の大人子供が、小学校の中庭に集結し、次から次へと催し物に花を咲かせていました。目に見える景色の全てが平和でした。

子供たちと言えば、工房への自転車通勤中に、ジャットコミュニティの横を通るんですが、そこに住む子供と、謎に毎日握手をしたのも良き思い出です。

作品の端縫いをお願いしているソナルさんこお宅も訪れました。預けていた作品のピックアップで、スフィヤンと共にソナル宅に到着すると、彼女と彼女のお子さんが出迎えてくれました。子育てをしながら、25〜30人の縫製チームのリーダーを務めていらっしゃるようです。職人仕事のみならず、アートワークのような、一点もののオーダー品なども見せてくれました。同年代、尊敬です。

バンダニや板締めなどを行う SIDR craft(シードルクラフト)では、今年も色々な作品を作る傍ら、工房に訪れる方々と沢山交流できました。この工房は、寛大で暖かい場所です。

滞在序盤には、工房のボスの1人であるアブドゥラさんの御息女である、フィザさんの結婚式に参加しました。今まで、何度かこちらの結婚式に参加したことはあるのですが、通しでの参加は初めての経験。豪華絢爛で、どこを見ても煌びやかな3日間で、結婚や結婚式に対する価値観の違いも、改めて認識しました。

制作は、引き続きバンダニと板締めをメインとしつつ、前回の滞在でやり残していたものを完成させたり、カッチ在住のパタンナーさんが新しく制作した衣服に、私のデザインを掛け合わせた作品を作ったり。あとは、こちらの工房では今まで化学染料で染めていましたが、初めて草木染め作品も制作しました。もっと沢山作りたかったな。

そして、最後の最後、それもカッチを出発する前日というバタバタなタイミングで、唐突に婚約式に呼ばれまして、諸々ギリギリで強行突破したのも良き思い出。

NGO Shrujan(シュルジャン)との共作は、主に刺繍作品を制作しました。
Shrujanの環境は最高で、私は主にデザインを担当するのですが、そこからプロダクトになるまで、沢山のプロの力をお借りしながら進めます。こんなに恵まれた環境で制作する経験を得られて、本当にラッキーです。

ただ、やはり形になるまで時間がかかり、特に、村の女性たちに布と刺繍糸を預け、各家庭で作業をしてもらい、それを回収するという部分は、全くスケジュール通りには動きません。カッチ滞在中は週1、2回 Shrujan に通って、進行の状況を確認&修正を繰り返しました。

3ヶ月と少しで19点のデザインを考えましたが、カッチを出発するまでに回収できたのは6点。残り13点は完成を待っている状況です。

LLDCと呼ばれるShrujanに関連する施設で、毎年1月ごろに行われるフェステイバルにも、初めて伺うことが出来ました。地元民にとっては、連日夕方から夜遅くまでやっている、お祭りのような賑やかで楽しいイベントですが、日中は、このイベントのために他の州からやって来た職人やアーティストが、Shrujanのスタッフや御関係者と、情報を交換したり、勉強会をしたりする機会にもなっていて、流石、素晴らしい仕組みでした。

今回の滞在では、ニローナにある工房で、初めてローガンアートにも取り組みました。共作した時間は短いものでしたが、彼らの制作への意欲と言いますか、オープンなマインドが瑞々しくて、物作りっていいなぁと感動する時間となりました。

SIDR craft で出会った、フランス在住のインド人女性のマヒラさんに連れられて、非営利団体のSOMAIYA(ソマイヤ) にも訪れました。カッチの伝統工芸家のためのデザインとビジネス教育研究所で、主にカッチの職人の家で育った若者が通い、そこで得た知識や技術を、各家庭の工房に持ち帰って実践、を一定期間繰り返します。

もとより、このカッチという地域は、職人が育つ仕組み作りや、環境のレベルが高いなと思っていましたが、ここでもやはり、それを感じずにはいられません。それに、言い方を選ばずに言えば、お金を持った大人が、一定地元の文化に還元するような、素敵な使い方をしている印象があります。学びが多いです。

世界遺産のドラビラ遺跡にも行ってきました。ハラッパー遺跡並みに、めちゃくちゃ重要な遺跡のはずなんですが、政府から予算が降りず、発掘作業は中断しているそうです。そんな貴重な場所を普通に歩き回れます。

初めてガンガラムに行ったのも良き思い出。宿のあるブージからバスで片道約2時間。コーヒーを求めて2回も行きました。デリーまで直行便が飛ぶカンドラ空港から近いこともあり、綺麗めなホテルやレストランも多数。見たことがないタイプのリキシャも走っていて、まるで違う地域に来たみたい。

ただ、2025年2月から、なんとブージ&デリー間の直行便の就航が始まったので、もしかしたら、この街も変化してゆくのかもしれません。どう変わろうとも、美味しいコーヒーが飲める限り訪れます。

今回の滞在でも、泣きそうになるくらい、素敵な体験や場面がありました。ものづくりに携われて、本当に嬉しい。帰国してからは個展の準備等でバタバタと過ごしましたが、先日久しぶりに実施したワークショップでは、早速皆さんと今回の滞在で得た情報を共有しました。この活動が続けられるように、引き続き淡々と手と頭を動かします!